2021年06月29日 更新
3年前の2018年2月、イギリスの現代アーティストPJ クルック氏(1945〜)に会うためにチェルトナムにあるアトリエを当館の学芸員が訪ねました。
▶︎PJ クルック(1945年〜):イギリスの現代アーティスト。彼女の作品は英国のプログレッシヴ・ロックバンド「キング・クリムゾン」のCDジャケットにも数多く採用されています。諸橋近代美術館では、サルバドール・ダリに次ぐ規模で彼女の作品を所蔵し、約30点にのぼります。
チャルトナムはイギリス南西部に位置する町で、ロンドンから電車で3時間ほどの場所にあります。近代的なロンドンの建造物とは対照的に昔ながらの建造物が残るのどかな町並みが広がります。この町に彼女の母校であるグロースターシャーカレッジがあるのですが、この大学には彼女の作品が3点飾られています。なんと今年には彼女の名前を冠した「CROOK」という寮が完成するそうです。そういえば人気ファンタジー小説「ハリーポッター」でも偉大な卒業生を寮の名前にしていたような・・・。寮名に偉大な卒業生の名前を付けるのは、もしかしたらイギリスの風習かもしれないですね。
彼女の自宅に着くと、クルックの長年のパートナーであるリチャードが手料理を振る舞ってくれました。彼は”芸術家”クルックにとってのパートナーでもあります。クルックが制作活動に集中できるように、食事などの家事から制作活動の記録にマネジメントまで、ときにはクルックの作品の制作補助も行なっています。なんだかスペインの芸術家サルバドール・ダリとその妻ガラとの関係にも似ているような気がします。なんでもかんでもダリと繋げてしまうのが、ダリ愛が強すぎる当館の悪い癖かもしれませんね(笑)。大きな成功を収めるには誰かの支えが必要ということは、芸術家に限らず言えることかもしれません。
彼女たちの家で食事をいただいているとき、私はあたりをキョロキョロせずにはいられませんでした。さすが芸術家の家!と言ってしまうのは偏見かもしれませんが、出てくる食器がどれも可愛くて素敵なものばかり。しかも部屋を見渡すと壁には彼女のペイントが!作品の中に入り込んだような空間で、私はしばしイギリス伝統の家庭料理とワインを楽しみました。
食後は彼女の自宅の向かいにある彼女のアトリエを訪ねました。アトリエには制作途中の作品や未発表の作品が所狭しと置かれていました。それらをクルック本人に案内していただけたのは、いちクルック・ファンとして、とても幸運な体験でした。
ぜひ、クルック作品を2021年7月13日から開幕するコレクションテーマ展「ステッピング・アウト〜日常の足跡〜」の会場でご覧ください。クルックの新収蔵作品も登場します。お楽しみに!