2012年10月01日 更新
滑らかなフォルムの背もたれと肘掛。その先には華奢な女性の手が置かれています。一方で扇形の硬い座席につながる3本の脚先は華奢なヒールでとても実用的ではありません。柔らかさと硬さが共存する不思議なオブジェ、どんな背景から生まれたのでしょう。
ギリシア神話に登場する女性レダは、スパルタ王の美しい妻でした。彼女を気に入った神ゼウスは白鳥の化身となり、レダの目の前で鷹に追い掛け回されること にします。窓辺で様子を見ていたレダは白鳥をかわいそうに思いました。レダの柔らかな腕に隠れたゼウス。レダは2つの卵を産み、そこから4人の子供が誕生 しました。
このオブジェは、先にダリの絵画「バラの頭の女」に描かれ、後に絵中の人物や家具が彫刻や家具として立体化されたものです。絵画には、2つの卵が描かれて います。1つは遠くの地面の上に、もう1つは、不安定なテーブルの上に・・・。卵はバランスを崩したら転がってしまいそうです。「レダ・アームチェア」 は、このテーブルと対になって存在していたのです。緊張感とユーモアに溢れたダリのオブジェ。背景をたどると鑑賞の楽しみも広がります。