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コラム

西田シャトナー折り紙展 「22.5°の宇宙」:作品導き出す魔法の角度

2013年08月19日 更新

諸橋近代美術館では7月6日より特別展としまして「西田シャトナー折り紙作品展『22.5°の宇宙』」を開催しています。
西田シャトナー氏は1965年生まれ。幼い頃から折り紙に親しみ、数度にわたり「世界のおりがみ展」に出展。折り紙界において「天才少年」として知られます。
また、大学の同好会で出会った演劇の世界でも才能を発揮し、1991年より劇作家・演出家としてデビュー。
現在は演劇界で様々な表現活動を展開している一方、折り紙作家として個人的活動を続けています。
演劇と折り紙は相容れない世界のように思いますが、限定された舞台空間で表現する【演劇】と、1枚の紙から折り出す【折り紙】は「どちらも、ひとつの素材をもとにして、発想の限界を超え、すべてを生み出そうとする仕事です。」と西田氏は言います。

ダリの常設館として知られる当館がなぜ折り紙展なのか、不思議に思う方も多いのではないでしょうか。
西田氏が作り出すのは私たちの身近にいる生物だけではありません。ユニコーンや河童といった空想上の生物、そして当館が所蔵しているダリの彫刻《宇宙象》を制作しています。
もともと動物の象には興味がなかったという西田氏ですが、画集で見たダリの宇宙像に興味を持ち、制作を開始します。
当初、折り紙での制作は困難だろうと思われましたが、意外とたやすく折れてしまいました。
「自分の能力以上の何かの力が働いて折れたと思う。」
彼にとって《宇宙象》は偶然性や意外性を知った作品の1点となりました。

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西田氏は次のように語ります。
「世界には、いろんな生き物がいます。美しい生物、複雑な生物、シンプルな生物、奇妙な生物…そして、その全ての生物は、もとはと言えば皆同じように、1個の細胞が分裂を繰り返して誕生するのです。1枚の紙からいろんな形を折りながら、生命、さらには生命や折り紙を存在させている宇宙の不思議さを感じています。22.5°とは、折り紙の90°のカドを半分に折り、またさらに半分に折った時に現れる角度のことです。折り紙を折る時にかならず出現し、それを生き物の姿に導いてくれる魔法の角度です。」

この作品展では彼が22.5°の力で折った約50点の作品と、完成した折り紙作品の折り目から最も重要な線のみを抽出した展開図、そして折り紙を折りながら心をよぎった言葉などを展示しています。
折り紙の魔法を通して、生き物の不思議さや、私たちの住んでいる宇宙の素晴らしさを感じていただけたらと思います。

作品
①《ダリの象(大きいオベリスク)》2010年 紙
②《赤いユニコーン》2011年 紙
作家 蔵

執筆者:学芸員 稲田由希
掲載誌:福島民友 2013年8月7日掲載

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