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コラム

展示室の空気環境

2014年12月17日 更新

展示室では展覧会の会期中、作品や資料が広く一般に公開されます。この場所はどのように管理されているのでしょうか。
展示室内は作品保存のための適切な湿度と鑑賞者にとって快適な温度が設定されています。また、照明は作品を劣化させる要因となる紫外線・赤外線の少ないものを採用するのが近頃の傾向です。このように、作品にとって快適な環境を作るため、美術館は様々な点に留意しながら展示室を管理しています。

展示室の空気環境に焦点を当ててみましょう。展示室内の空気は、美術館の建材から出てくる酸性物質や外気と一緒に入ってくる車の排ガス、人間が運ぶ粉塵等が含まれています。そこに置かれた作品は劣化を促す様々なリスクに曝されていることになります。美術館はそのリスクをなるべく排除するよう努めなければなりません。具体的には、設計段階から外気の影響を受けにくい施設構造を考案したり、空気を汚し作品の劣化要因となる物質(飲食物、カビ、虫、ネズミなど)を展示室から取り除いたり、空調設備でクリーンな空気を展示室に送り込んだりする方法があります。

現在、当館は外部機関の協力を得て、展示室の空気環境調査を行っています。作品にとって適切な空気環境をつくるためには、まず何が問題かを把握することから始まります。このために、pH(水素イオン濃度指数の略称)測定、カビの胞子の多少(カビの胞子はおよそどんな場所にも存在します)、空気の中に作品の劣化要因となる物質が含まれているかどうかなど、多岐に渡る項目の調査をしています。ここで問題があれば、対策を講じます。美術館だけで対処できない場合には、専門家の協力を得て空気環境を整えていくことが必要になることもあるでしょう。展示室の空気環境を整えることは、作品を後世に守り伝えるための一助となっていくのです。

写真:作品付近の空気を調査する様子。

写真:作品付近の空気を調査する様子。

参考文献
三浦定俊・佐野千絵・木川りか『文化財保存環境学』朝倉書店、2004年
執筆者:学芸員 齋藤友佳理

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