2015年03月23日 更新
「美術は大切」よく言われる言葉ですが、具体的にどのように大切なのか、疑問に思ったことはありませんか?
小・中学校の学習指導要領(平成二十年改訂)では美術科目の目標を「感性」と「情操」を育てることと記しています。どちらも抽象的な言葉なので、美術教育のわかりにくさに繋がっているのかもしれません。
別の言葉に言い換えるとしたら、「さまざまなものに反応し、感覚で受け取る能力(感性)」と「さまざまな事に対して知的かつ感情豊かでいられる安定した状態(情操)」でしょうか。青少年による凶悪犯罪が後を絶たないという社会的背景も、義務教育で感性・情操を育てる理由のひとつとなっています。
写真:工作をしている様子
ひと昔前は、「表現」の授業が美術科目の中心でした。自分が表現したいものをつくるための素材選びができるようになり、道具の使い方や技法を習得し、完成時の達成感や喜びが創造されることを重視していたのです。
しかし、社会人になってから美術への関わり方が鑑賞中心となることや、欧米の影響で美術館教育が急速に発展したことを受け、平成二十年の学習指導要領改訂後は「鑑賞」がこれまでよりも重視されるようになり、学校は美術館とのより一層の連携を推奨されるようになりました。
改訂当初は、慣れない鑑賞の授業に、教師が頭を悩ませることが多かったのではないかと思いますが、近年では学校と美術館の双方が協働して行う鑑賞授業の実例が増えてきています。
そこで特に注目されているのが「対話型作品鑑賞」と呼ばれる鑑賞方法です。
次回はこの方法の内容について、ご紹介します。
執筆者:学芸員 稲田由希
この文章は2015年3月17日発行の富田幼稚園会報誌「はとぽっぽ」に掲載された寄稿文を再編集して掲載しています。