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コラム

ダリと映画

2015年05月29日 更新

当館では6月21日(日)に「ゾートロープでアニメーション」と題したワークショップを行います。「ゾートロープ」とは一体何なのか?知らない方も多いのではないでしょうか。

「ゾートロープ」は、映画やアニメーションの原型と言われています。1834年にイギリス人医師、ウィリアム・ジョージ・ホーナーが発明しました。等間隔に隙間をつけた円筒の内側に、連続する静止画を帯状に貼り付けます。円筒を回転させ、スリットを覗くと、静止画が動いて見えるというのがゾートロープの仕組みです。

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写真:ゾートロープ

当館所蔵の《回顧的女性胸像》(サルバドール・ダリ作、1977年)では、帯状の連続する静止画を円筒形にして、マネキンの首飾りにしています。その図案や形状はゾートロープを彷彿とさせるものです。おそらくダリの映画やアニメーションに対する強い関心から、このような首飾りのアイディアが出たのだと思われます。

ダリは映画『アンダルシアの犬』(1928年)と『黄金時代』(1932年)で、映画監督のルイス・ブニュエルと共に脚本を書きました。また、アメリカに亡命した1940年以降も、アルフレッド・ヒッチコック監督の『白い恐怖』(1945年)の美術を担当し、1946年にはウォルト・ディズニーと共にアニメ『デスティノ(Destino)』の製作を企画しています。(その後、財政的な理由から製作は中止となっていましたが、2003年にウォルト・ディズニーの甥の手によって完成されました)

ダリは映画という表現媒体に何を求めていたのでしょうか?

自著『告白できない告白』では、映画『アンダルシアの犬』について以下のように書いています。「わたしは、考えたり見たりする習慣と、主都のキザな俗物や知識人の低俗な気晴らしの概念とを動顛させ、挑発してほしいと思う映画を、胸に思いえがいていたのである。」(※1)夢のように脈絡のない断片的なイメージが繋ぎ合わされ、突然の場面転換も多い『アンダルシアの犬』は、夢や無意識下の欲望をテーマに表現してきたダリの「動く絵画」(※2)でした。

また、同著では「このフィルムは、花火のように火の文字で、ダリという署名を焼きつけ、わたしが有名になる道を大股で踏み出すことを可能にするように運命づけられていた。」(※3)とも書かれています。ダリは大衆娯楽として普及していた映画を自身の名を挙げるために利用したとも言えるかもしれません。事実、『アンダルシアの犬』での華々しい評価によって、ダリはパリのシュルレアリスムグループに歓迎され、芸術の都での社交界デビューを果たしたのでした。

※1 サルバドール・ダリ『ダリの告白できない告白』山根和郎訳,二見書房,1976年, p.91, l.11。
※2 サルバドール・ダリ『ダリの告白できない告白』山根和郎訳,二見書房,1976年, p.91, l.21。
※3 サルバドール・ダリ『ダリの告白できない告白』山根和郎訳,二見書房,1976年, p.91, l.24。

執筆者 : 学芸員 稲田由希

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