2020年03月16日 更新
1954年、ダリとハルスマンは写真集『ダリの口ひげ(原題:Dali’s Mustache)』を共作しました。ダリは質問に対して答え、ハルスマンはダリの言葉に対応した写真を撮影するというインタビュー形式の写真集です。
インタビューの中で、「決定的な芸術スタイルを確立し終えたか」と問われたダリは「いいや。私は“モビール(mobile※)”だ」と答え、さながらモビール細工のように吊るされたダリのひげと目の写真が添えられました。その制作過程を残した記録では、パーツを残して彼の顔面が塗りつぶされています。
こうした塗料の加筆や、二重露光、暗室での操作による写真の繋ぎ合わせは、ハルスマンの思考と実験に基づき全て手作業で行われました。今やデジタル加工アプリによる写真編集は日常的で手軽なものですが、当時ハルスマンは非常に高い技術と芸術的素養を要する方法を駆使し、不条理とユーモアに彩られたダリの言葉を写真化することに成功したのです。
※モビール細工のほか、可動性のある様を意味している