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コラム

ダリ生誕110年・開館15周年記念展 「LOVE STORY~ダリ5つの愛の物語~」

2014年05月20日 更新

当館にて開催中の「LOVE STORY~ダリ5つの愛の物語~」についてご案内させていただきます。本展覧会はスペインが生んだ20世紀の巨匠、サルバドール・ダリ(1904-1989)にまつわる愛を分類し、「第Ⅰ章 家族と故郷への愛」「第Ⅱ章 アヴァンギャルド愛」「第Ⅲ章 ガラへの愛」「第Ⅳ章 古典への愛」「第Ⅴ章 自己愛」という全5部構成となっています。 本稿では、「第Ⅱ章 アヴァンギャルド愛」の中から、1930年に制作された《姿の見えない眠る人、馬、獅子》(公益財団法人ポーラ美術振興財団ポーラ美術館所蔵)をご紹介いたします。

《姿の見えない眠る人、馬、獅子》1930年 公益財団法人ポーラ美術振興財団ポーラ美術館所蔵 ©Salvador Dali, Fundació Gala-Salvador Dalí, JASPAR Tokyo, 2014 E0958

《姿の見えない眠る人、馬、獅子》1930年
公益財団法人ポーラ美術振興財団ポーラ美術館所蔵
©Salvador Dali, Fundació Gala-Salvador Dalí, JASPAR Tokyo, 2014 E0958

たなびく雲が夕焼けに染まり始めるなか、荒涼とした風景の中央には横たわる裸婦・馬・咆哮する獅子のイメージが重ねられています。ダリは1930年に著した『見える女』の中で、1つの図像から複数のイメージを浮かび上がらせる手法―二重像(ダブル・イメージ)―についての考えを明らかにしています。これ以後、ダリを代表する表現の一つとして知られるようになります。また、遠近法が強調された画面の奥には、煙突や長い影を落とす彫像など、依然としてジョルジオ・デ・キリコの影響が見られます。しかし、遠く小さく表されたそれらとは対照的に、画面中央に堂々と配された「裸婦・馬・獅子」の存在感は、「二重像」という自らの表現技法の確立を高らかに表明しているようです。本作はダリ独自の手法への到達という点で、初期作品の中でも重要なものといえます。

最後に、画面中央下にはこの絵が制作された同年に結婚した妻ガラの名前が書かれています。表現はアヴァンギャルドへの、作品は妻ガラへのそれぞれの愛が垣間見える作品です。

ぜひ、会場で細かな風景描写や隠されたイメージを観察してみてはいかがでしょうか。

執筆者:学芸員 齋藤友佳理
掲載誌:福島日仏協会会報 Île de Bonheur(イルドボヌール)2014.4月号 第58号

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