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コラム

印象派と20世紀の巨匠たち―キース・ヴァン・ドンゲン《ボアを纏った女》

2013年10月15日 更新

今回は常設展「印象派と20世紀の巨匠たち」展示作品より、キース・ヴァン・ドンゲンの《ボアを纏った女》をご紹介します。
日本において、フォービズム(野獣派)の作家としては馴染みの薄いヴァン・ドンゲンですが、20歳でオランダから渡仏し、画業以外の様々な職で生計を立てながらフォーヴ運動に参加した作家です。パリ・モンマルトルの集合アトリエ「洗濯船(バトー・ラヴォワール)」の一員となり、社交場や娼館の女性達をモチーフに数々の作品を手掛けます。1905年のサロン・ドートンヌでマティス、ヴラマンクらと共に作品が展示されたことにより、名実共にフォービズムの仲間入りを果たしたのです。

キース・ヴァン・ドンゲン 《ボアを纏った女》 制作年不詳

キース・ヴァン・ドンゲン
《ボアを纏った女》 制作年不詳

《ボアを纏った女》は素肌に毛皮を纏った女性の肖像画ですが、フォービズムに代表されるマティスの作品《緑のすじのある女:マティス夫人の肖像》やヴラマンクの《ドランの肖像》の様に、画面全体に激しい色を配置した荒々しいタッチの表現とは異なり静寂と憂いを備えた作風が特徴的です。沈んだ色のコートと背景、女性の肌は青白く、フォービズムの作品としては極端に地味な印象さえ受けます。しかし女性の目元を彩る深い青、燃えるような紅色の唇、エメラルドグリーンの影の効果によって眼差しは力強く、女性の意思を宿しているようにも感じられます。
この様に、ヴァン・ドンゲンの作品においては激しい色遣いがあくまで主題を引き立たせる役割を担っているため、他のフォービズム作品とは一線を画した表現を垣間見ることができるのです。

現在、美術館周辺では紅葉が色付き、五色沼・毘沙門沼の水面の鮮やかな緑色と相まって美しい景色を見ることができます。
裏磐梯へお出かけの際は、自然の美をご堪能の後にぜひ当館へお立ち寄りになり芸術鑑賞をお楽しみ下さい。

アンリ・マティス 《緑のすじのある女:マティス夫人の肖像》1905年

アンリ・マティス
《緑のすじのある女:マティス夫人の肖像》1905年

モーリス・ド・ヴラマンク 《ドランの肖像》 1905年

モーリス・ド・ヴラマンク
《ドランの肖像》 1905年

掲載日:2013年10月15日
執筆者:学芸員 大野方子

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